50代、確実に出来そうなバイトは警備員

この年齢で間違いなく出来るのは警備員

今からちょうど15年前、2003年の3月ごろは、新卒採用の真っただ中だった。

当時、前の会社で技術系の学卒院卒の採用担当をしていた。並行して技術系の経験者採用、一般で言う中途採用の担当もしていた。

限りなく忙しい時期だった。

朝、7時前には出勤、夜は終電か、それに乗れずにタクシーか、という毎日、それも土日も含めてほとんど休みなしだった。

今、社会問題となっている超長時間時間外であった。

でも今も採用担当はそうなのではないだろうか。

と、採用する側だったのが今は採用される側となり、就職活動の難しさを味わう側となっている。

と言っても、自分の会社の一応社長ではある。会社と言っても、今は店舗をひとつ運営しているだけである。

それも近くに大型ショッピングセンターが出来てから、売り上げが落ち込み、ついにはアルバイトをする必要に迫れれたのがおととしの秋であった。

アルバイトぐらいすぐに見つかるだろうと高をくくっていたら、これが実は簡単ではなかった。

で、結局やったのは警備員のアルバイトであった。

警備員、イメージとは全く違うハードな仕事

50代後半、特に技能や資格がない場合、この年齢でもほぼ問題なく出来るアルバイトは限られていた。

50代はもちろん、60代でも採用される可能性が高いのが警備業である。

いわゆる警備員や工事現場で交通誘導したりする交通誘導員、またスーパーの駐車場などの誘導員である。

ということで、応募したらすぐに採用された。

僕がやったのは、うちの店舗の売り上げが落ち込んだ原因ともなった近くの大型ショッピングセンターの警備員であった。

そこでは、駐車場の誘導員と施設内の警備員の両方を同じ警備会社が請け負っているのだが、僕は施設内の警備員として採用された。

よく、そういった施設で見かける警備員の制服を着て巡回しているあれである。

50、60でも出来るとは言え、実際の主要メンバーは必ずしも中高年ではない。

僕の入った警備のところでは、2つのグループに分かれていて、僕はショッピングセンター本体の方のグループでそのグループはどちらかというと、年齢層が高かったのだが、でも副隊長は24歳という若者だった。

副隊長と言っても社員ではなく、やはりバイトである。

もうひとつのグループはテナントの入っている建物を担当するグループだったが、そちらは20~30代がメインのメンバーであった。中高年のメンバーもいたが、どちらかというと虐げられているようだった。

警備員というと、イメージとしてはただ施設内を巡回して歩いているだけ、あるいは受付で座っているだけ、だから50、60のオヤジでもできるんだろう、と思っている人が多いだろう。僕もそのイメージだったから。

実際、募集のうたい文句も、ほとんど受付メインの楽な仕事ですみたいなことを書いてあった。

でも、実際にやってみると、そんな簡単なものではなかった。

よく考えればそうである。ショッピングセンターということでいわゆる万引きなどに注意を払わなければいけない。また何らかのトラブルや事故があれば適切な対応をしなければいけない。万が一の場合は人命にかかわることもある。これは決して大げさなことではなかった。

ただ、僕は昼間はお店の仕事があるので、夜勤のみの短頭であったので、実際に営業時間内の警備は夜8時から11時までであった。したがって、昼間に比べれば、そういった仕事は少なかった。

その代わり、お店の閉店作業、閉店後の駐車場、店内の巡回、そして早朝の納入業者の受付及びその出入り管理、そして朝7時からの開店作業と、朝の8時まで仕事を行うのである。言葉で書くと簡単そうであるが、実際の業務内容はけっこうハードであった。一晩で3万歩近く歩くのである。

閉店作業では、1回から屋上までエスカレーターを止めながら上り、降りてくるときは閉店した階のフロアを隅々まで残っているお客様はいないか確認していく。

最後に1回の食料品のフロアの閉店時間になったら、またその売り場に残っているお客様がいないかどうか、トイレも含めてすべて確認、いないことが確認出来たら、出入り口を閉鎖、そして納品のための出入り口も閉鎖する。それが終わったら、時間によては真っ暗になった立体駐車場を隅々まで歩いて点検、特にこまめに配置されている消火器などが確実にあるかどうかのチェックをしながら残留車両を確認する。

それが終わったら、今度は細密という売り場すべてのドアとレジの施錠確認、更衣室などの確認を人気のないすべての売り場で行う。食品売り場の裏側では、調理器具などのガスの元栓の確認、冷蔵庫、冷凍庫の中に人がいないかの確認など、また同時に事務所の施錠もこの時に行っていく。

確認ができたところのいくつかは、確認後、機械警備、つまりセンサーを有効にして人が入ると警報を鳴らすようにセットするのである。

機械警備セット後に誤って人が侵入すると防災センターの警報がなり、同時にセコムに自動的に連絡されてしまう。

そのため、誤報であればすぐにセコムに誤報である旨を連絡しないと、セコムの担当者が来てしまう。来てしまうと出張料が発生してしまうので、あとで隊長に怒られる、ということになってしまう。

というような作業を終えて防災センターへ戻ってくるのは夜中の2時から3時くらい、パソコンで日報を作成して4時を過ぎると今度はついさきほど施錠した事務所の開錠作業、早朝勤務の従業員の受付管理、開店前に納入に来る納入業者の受付、業者入り口での立証(出入り口横に立って業者以外の人間が出入りしないか確認すること)

7時には1回の食品売り場が開店となるので、出入り口の開放確認、2~3階は10時からの開店なので、その階にエレベーターが止まらないかの確認などの開店作業。

夜の8時から、朝の8時までの12時間勤務が、あわただしくく過ぎていくのであった。休憩時間はスケジュール上は2時間ほどあるのだが、僕は新米だったこともあり、実質そんなに休めなかった。

ただし、要領のいいひとは適当に手を抜いて、けっこうしっかりと寝る時間を作っていたのだが・・・。

これが警備の夜勤であった。

昼間の勤務の場合は、朝10時の開店作業後は、基本、店内の巡回と社員の出入り管理である。

それも結構大変そうだった。僕が勤務したショッピングセンターは新しいので、出入り口にはすべて顔認証のカメラが設置されていた。

顔認証、実際に使われているのである。

顔認証なんかが、普通のショッピングセンターでも使われているのは少し驚きだった。

まさに「科捜研の女」でやっているあれである。

過去に万引き等を行った人、何らかのトラブルを起こした人、クレーマーなど、ちょっとした問題を起こした人はすべて顔が登録されている。

ほぼ、その人間が入ってきたら、確実に顔認証システムは反応するのである。

カメラのモニターを通して、その人間が登録されている人間だと確認されると防災センターでカメラで追いながら監視、必要に応じてただちに警備員が現場へ急行して直接監視体制に入る。

ただし、制度が必ずしもいいとは言えない部分もある。登録者はほぼ確実に反応するが登録していない人にも似ている人には反応するのである。

とはいえ、テレビの世界でしか知らなかった顔認証システムがこんな身近なところでも使われているなんて、少し意外だったのである。

また、こういったところでちょっとしたクレームを付けたり、何らかのトラブルを起こすと、即座に顔認証システムに登録されてい、入店するたびに必ず、監視されることになるのである。

おそらくそのほとんどの人は、自分がカメラで監視されているなんて全く想像もしないだろうけど。

このシステムで実際に万引きをした人間が入ってきたのが確認されると、大変である。

警備員総出での監視体制に入る。

ただし、警備員はよっぽどの確証がない限り、犯人を捕まえることは出来ない。

例え、犯行現場を目撃したとしても、その商品を店から外に持ち出さなければ、犯罪にはならず、たとえ持ち出したとしても、捕まえられる前にその商品をどこかに隠す、あるいは捨ててしまえば、証拠がなくなるので、逆に名誉棄損で訴えられることもある。

従って、確実に犯罪を立証できる証拠がない限り、声をかけたりすることは原則として出来ないのである。

万が一、間違った人に声をかけたりしたもんなら、大変な騒ぎになりかねない。

穏便にすましてくれる人ならいいが、そうでない場合、そのお客さんから罵声を浴びる、警備のお客様であるお店からは説教される、ということも実際にあるようで、決して割のいい、楽な仕事ではないのである。

このように、警備の仕事は決して楽な仕事ではないのである。

それでもこの現場はかなり楽な方だと言われていたのだ。

それに比べれば、暑さ寒さを絶えられれば、まだ駐車場の誘導員の方が仕事としては楽とのことだった。

これも仕事のやり方次第だとは思うが、警備のアルバイトは確かに50代、60代でも比較的採用されやすいのだが、実際の仕事は決して楽なものではないのである。

僕はこのアルバイトを12月の半ばから始めて、翌年の4月末で辞めた。夜勤なら昼間は少しはお店の仕事ができるかと思ったが、上記のようにけっこうハードな内容なので、昼間はどうしても寝てしまう。したがって、お店の仕事が思うようにできなかったところに、たまたま家内の体調が悪くなって、お店を手伝う必要に迫られて止めたのである。

まぁ、それなりに大変で時給もそれほどいいわけではないけど、夜8時から朝8時までの12時間勤務は、休憩時間も含めてすべて拘束時間となるので、日給としてはそこそこになるので、50代、60代のアルバイトとしては金額的にはいい方だと思う。

もし、50代でアルバイトの必要性がある人(そんなひとはあんまりいないと思うけど)は警備員は最有力候補にしてもいいのではないだろうか。