あの日以降、急に怒りの電話がなくなった。

ある巨大スーパーでの出来事

その日は、久しぶりに家内と息子を連れて母のところへ行った。草むしりや室内の掃除を一緒にやってから、近くにある大きなスーパーへみんなで行ったのだ。

スーパー内のレストランで昼食を、ということでみんなで昼食を食べている、その途中までは母も普通にしていたのだが・・・。

食事もほぼ終わりつつあり、僕は母に「買い物はどうしようか?」と話しかけた時には、母はすでに怒りの人格に豹変していた。

このご時世なので、食事中もあまり大きな声で話をすることは出来ないので、隣同士で座っていた家内と息子が控えめな声で他愛もないことを話していた。

正面にいた僕と母とはほとんど会話することもなかった。それが原因の世だった。

家内と息子が自分には話をしてくれないことが、母の怒りの人格を呼び覚ましてしまったようだった。何でそんなことで、と思うのだが、母の豹変の原因はそれで間違いなかった。

「買い物はどうしようか?」という僕の問いかけに対して、「もうお前たちなんかとは買い物なんかしない!」と怒りに満ちた母の返答が・・・。

まだレストランの中だったので、近くに座っていたお客さんも、その言葉でこちらを見ている。食事はほぼ終わっていたので、「会計して出よう」と、僕らは席を立ったが、母はしばらくその場に座ったまま。

しばらくしてレストランから出てきた母に、また声をかけると、「あたしは一人でタクシーでどこかへ行くから」と怒りの人格からの返答が・・・。

周りには人がたくさんの人がいる。その場でまたトラブルになるのが嫌だった僕らは、「わかった」と言って、母から離れることにした。

その後、母や一人で巨大スーパーの中を途中、買い物をしながら歩き続けた。と言っても、かなり足腰は弱っているので、半分はベンチで休んでいたのだが・・・。

そんな母をどうしたものか、いっそのこと、そのまま置いて帰ろうかとも思ったが、家内が担当してくれている包括センターへ状況を話て相談すると、とりあえずは、タクシーの乗るところまでは確認した方がいい、ということで、結果的に、僕と家内がほぼ4時間、母の尾行をすることになった。

途中、2回ほど母に近づき、一緒に帰ろうと誘ったが、怒りの人格は変わっておらず、家内に対しての怒り音言葉と、「これからタクシーで党巨益へ行く」といういつもの言葉が。

が、4時間ほど過ぎたところで母から電話があり、「タクシーで家に帰るから住所を教えろ」と。自分の家の住所も忘れているのだった。

家内と息子は別に変えるということにして、何とか母を車で送ることになったが、母の家に着いて降りたところで、「どうせまたお前は戻ってあいつらと一緒に帰るんだろう」との一言が。

それを聞いた途端、なんで何も悪いことをしていない僕の家族がそんなことを言われなくてはいけないのだろう、と僕の中でも怒りが爆発してしまった。

何といったか覚えていないが、車から降りた母に対して大声で怒鳴り、すぐさま、また車を発進させて母の家を後にしたのだった。

昨日のことはなかったかのように翌日電話がかかってきた

その翌日の朝、母からの着信があったがあえて僕は出なかった。いつもの通りに。

すると、昨日あんなに怒りの矛先を向けていた、家内に電話をかけてきた。昨日のことはなかったかのような普通の電話だったとのこと。そして最後に、昨日はごめんなさいね、と言っていたとのこと。

ただ、自分がどういう状態であったのかは、覚えていないようだった。

そして、それ以降、多い時には1日に数十回もの電話、それも怒りの電話をかけてきていたのに、全く電話がかかってこなくなった。

母の家へはそれまでと同様、ほぼ1日おきに週3回行くのは変わりなかったが、それまでのように怒りの人格に豹変することは、ほとんどなくなった。ほとんどというか、全くであろうか。危なくなりそうなときは、あったが今までのように豹変することはなくなったのだ。

その状態がもう3週間ぐらい続いている。ある意味では、スーパーでの4時間に笑る尾行事件を境に、電話もかけてこなくなり、怒りの人格も出てこなくなる、という豹変である。

と言っても、いつまた怒りの人格が出てくるかと、まだまだはれ物に触るように接していることには変わらないのだが・・・。

むしろ、この反動がいつ来るのだろうか、という思いもある。が、とりあえずは、この普通の状態が続いてくれることを願うばかりである。

でも、なんで急に怒りの人格が表に出てこなくなったのだろうか?

まったく電話もしてこなくなったのだろうか?

怖いぐらいに不思議である。